腎臓病のQ&A
腎臓病(第11章)

腎臓病の方が気になる疑問点のまとめ

腎臓病 (11章-1) 腎臓病のQ&A

腎臓病の方にとって気になる疑問点とその答えを、
Q&A形式で30個紹介します。

腎臓病になったら必ず食事制限をしないといけませんか?

 腎臓病の患者さんは塩分制限をする必要があり、症状が進行するとさらにたんぱく質・カリウム・リンの制限も求められます。
 血液をろ過して老廃物を取り除くという腎臓の働きが衰えた状態で、塩分、たんぱく質、カリウム、リンを摂りすぎると、腎臓に負担がかかり、腎臓病が悪化してしまいます。また、高血圧、高カリウム血症などの合併症の発症リスクが上昇し、不整脈や心不全などを起こすこともあります。
 制限食でも工夫次第でおいしく食べられますが、腎臓病の進行度や合併症の有無などによって制限内容は異なりますので、自己流ではなく、必ず医師や栄養士の指導を受けるようにしてください。腎臓病の進行を遅らせるためにも、決められた食事制限を守りましょう。

腎臓病の患者さんのレシピはどんなものがよいですか?

 腎臓病の場合、食事の塩分を控え、たんぱく質・カリウム・リンを摂りすぎないことが大切です。だしをきかせ、香辛料や酢などで変化をつけると薄味でもおいしく食べられます。
 「たんぱく質」というと肉や魚といったおかずを思い浮かべますが、実はごはんやパン、麺などの主食(穀物)にもたんぱく質が含まれています。腎臓病患者さん用にそれらを取り除いた食品を使用することで、限られたたんぱく質の摂取量をおかずに回せます。
 なお、たんぱく質の制限があるときはエネルギー不足になりがち。炒め物や揚げ物などの油を多く使うメニューや、でんぷんからできている春雨、砂糖入りの紅茶などで効率よくカロリーを摂りましょう。

腎臓病を予防する方法を教えてください。

 以前は慢性腎炎など免疫異常が絡む原因が多かった腎臓病ですが、最近は、成人病など、本人の自覚によってコントロールできる要因も増えています。このため、腎臓病を予防するためには、栄養バランスの整った食事、禁煙、過度なアルコール摂取をやめる、適度な運動をする、規則正しい生活をする――といった、理想的な生活習慣を身に付けることが大切です。
 喫煙や、アルコールの過剰摂取は、慢性腎臓病(CKD)の発症・進行に関与しているといわれます。また、運動不足や暴飲暴食は肥満を招き、腎臓血液量や排泄する老廃物が増加して腎臓に負担がかかります。
 腎臓病を予防する生活習慣は、メタボリックシンドロームの予防にも共通します。腎臓病を含めた生活習慣病を防ぐためにも、より健康的な生活習慣をめざしましょう。

腎臓病療養指導士とはどんなことをする人ですか?

 腎臓病療養指導士は、慢性腎臓病について基本的な知識と予防対策方法を習得した医療スタッフです。
 2018年に創設された制度で、看護師、管理栄養士、薬剤師の資格取得から3年以上経過し、実地経験、所定の講習会受講、認定試験合格の条件を満たした人に与えられます。
 慢性腎臓病患者さんの病期や体調に合わせ、生活、栄養、薬物の各分野においてアドバイスをしたり、必要に応じて腎臓専門医や他の医療従事者と連携をとったりする役目を担っています。ただし、アドバイスできるのは保存期慢性腎臓病患者さんに限定されています。

腎臓病の人工透析とは何をするのですか?

 人間は通常、尿が出なくなると老廃物が体にたまり、一週間くらいで生命を維持できなくなります(尿毒症)。人工透析とは、腎臓病が進行して腎不全に至った場合に腎臓の機能を人工的に代替する方法です。主に血液透析と腹膜透析の2種類があります。
 血液透析は、自分の血液をいったん体外に出してろ過し、余分な老廃物や水分などを取り除いてから再び体内に戻す方法です。1回あたり4〜5時間程度、週2~3回の通院が必要です。
腹膜透析は腹部に埋め込んだカテーテルを通してお腹の中に透析液を入れ、老廃物等を透析液に移してから排出させる方法です。1日4回程度、自分や介護者がバックを交換するので、通院は月に1~2回ほどで済みます。どちらにもメリット・デメリットがあり、状況に合わせて選択されます。

腎臓病が進行すると、なぜカリウム制限が必要なのですか?

 カリウムは生命維持に必要な電解質とよばれるミネラルのひとつです。過剰なカリウムは尿に出ていくので、腎機能が低下すると余分なカリウムが排出されずに体内にたまり、ひいては高カリウム血症を生じてしまいます。高カリウム血症になると、手足のしびれや不整脈などが現れ、心不全を起こして死に至るリスクもあります。
 ある程度腎臓病が進行すると、高カリウム血症を防ぐために口から入るカリウム量を制限するか、便と一緒に排泄されるような薬剤を用いることがあります。基本は食事療法で、カリウムはトマト、ブロッコリーなどの野菜類、バナナ、メロンなどの果物、干物、いも類、豆類などに多く含まれています。野菜を茹でこぼしたり、水にさらしたりすれば、カリウムが流れ出て量が減ります。正しい知識を身に付けて対処しましょう。

腎臓病は遺伝するのですか?

 多発性嚢胞腎やアルポート症候群など、ごく一部の腎臓病は遺伝が原因で発症します。
 しかし、腎臓病の多くは、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が原因とみられます。また、メタボリックシンドローム、高LDLコレステロール血症、痛風などの生活習慣病も発症リスクを上げることは明らかです。
 ただし、家族に腎臓病の患者さんがいる場合、腎臓病を発症する可能性が高いと考えられます。これは、遺伝や体質など先天的な要素に加えて、食生活、飲酒、喫煙、運動頻度など生活習慣が似ていることが要因です。家族歴がある場合は、特に注意して腎臓病予防に努めましょう。

なぜ腎臓病になると、たんぱく質制限が必要なのですか?

 腎臓病の機能が衰えた方がたんぱく質を摂りすぎると、たんぱく質を分解した際に出る老廃物をうまく排出できずに腎臓に負担がかかり、さらなる腎機能低下の要因となるからです。
 腎臓病の進行度によりますが、たんぱく質の摂取量は標準体重あたり1g/kg(体重)/日からはじめ、0.8~0.6/kg(体重)/日まで減らすことが推奨されています。ただし、たんぱく質を減らすと摂取カロリーが減り、体は生命維持のために筋肉を分解してしまいます。腎機能の状態によってたんぱく質の制限量は異なるので、主治医や管理栄養士に相談し、適切なたんぱく質摂取を心がけましょう。

腎臓病の患者は、外食をするのは無理でしょうか?

 食事は毎日、毎回のことです。またお仕事のある患者さんは常に自炊というわけにはいかないので、外食時のコツを理解しましょう。
 一般的に外食は味が濃く、ボリュームが多くなりがちです。そのため、塩分、たんぱく質、カリウム、リンの摂りすぎに注意が必要です。丼物や麺類などの一品料理は避け、バランスのよい定食を選ぶようにしましょう。ただし、定食に付くことが多い味噌汁や漬物は塩分が多めです。漬物は避け、味噌汁は具材だけ食べて汁は残すなどの工夫もできます。
 もともと味が濃いめなので、ソースやしょうゆなどの調味料は極力かけないのが理想です。主菜の肉や魚はおおよそ1/3程度残し、生野菜や果物は多少残す、もしくは1日の食事量のなかで、他の食事との調節をすることも可能です。

腎臓病ですが、コーヒーを飲むことはできますか?

 コーヒーは高カリウム飲料ですが、カリウム制限がない場合は、1日にコーヒーカップ2杯ぐらいまでなら差し支えないでしょう。ただし、牛乳を入れるときはたんぱく質、リンの摂取量にも注意が必要です。
 カリウム制限が必要な人は通常、1日のカリウム摂取量を1,500mg以下に抑える必要があります。レギュラーコーヒーには200mlあたり130mgと多くのカリウムが含まれています。コーヒーを飲むときは、小さめのカップを使って1日1杯までにとどめましょう。また、牛乳や生クリームは加えず、ブラックで飲むことをおすすめします。
 また、コーヒー100mlにはカフェインが約60mgのカフェインが含まれます。胃酸分泌刺激、利尿作用、興奮作用などがあり、腎臓病の患者さんは脱水や夜間の不眠なども注意すべきです。

腎臓病の診断を受けた人は、運動をした方がよいですか?

 以前は運動によって腎機能に悪影響が生じるとされ、腎臓に障害がある場合は運動を控えるべきだという考え方がありました。しかし最近では、適度な有酸素運動により尿たんぱくの減少が見られるなどの効果が指摘されていますし、肥満は腎障害の進行を進めるとされていますので、その予防にもなるでしょう。
 適度な運動は気分転換にも役立ちます。ウォーキング、サイクリングなどの有酸素運動を、軽く息が弾む程度に行いましょう。
 なお、進行具合によっては、過度の運動が腎臓に負担をかけることがあります。しかし、運動をまったくしないのもよくありません。定期的に適度な有酸素運動を継続することが望ましいとされているので、主治医と相談して運動を行いましょう。

腎臓病になっても、お菓子を食べられますか?

 糖尿病などの合併症がなければお菓子でエネルギーを摂ってもかまいません。
 たんぱく質制限をすると摂取カロリーが不足しがちになります。カロリー不足の状態が続くと筋肉が分解されてしまうため、せっかく食事制限をしても腎臓に負担がかかります。
 ただし、小倉あん、うぐいすあんなどの豆を使った和菓子、ケーキ、カステラなど卵を多く使った洋菓子などは、たんぱく質も多いので摂りすぎないように注意しましょう。また、お菓子でおなかがいっぱいになると食事の時間が不規則になったり、栄養バランスが崩れたりしやすいので、次の食事に影響を与えない程度にとどめましょう。

子供が腎臓病と診断されました。どんなことに気をつければよいでしょうか?

 子供の慢性腎臓病(CKD)は、学校検尿で見つかる糸球体腎炎や生まれつきの腎尿路疾患であることが多く、成人とは原因が多少異なるため、病気の性質と経過を専門医と相談しましょう。
 血圧のコントロールは必要ですが、子供の血圧の基準値は大人と異なることを理解してください。そのうえで塩分の制限、必要ならば降圧剤を使います。ただし、お子さんの場合は成長や発達を妨げてしまうため、たんぱく質の制限は行いません。
 また、摂取カロリーが足りないと成長が止まってしまうため、年齢別エネルギー所要量を目安に摂取します。ただし肥満の場合は、カロリーの摂りすぎに注意しつつ必要なエネルギー量を摂りましょう。
 習い事や部活動など、運動をやめる必要はありません。運動不足は肥満や高血圧につながるので積極的に体を動かしましょう。

腎臓病になったら、アルコールはNGでしょうか?

 適量のアルコールなら、摂取しても問題ないといわれています。
 ただし、アルコールは高カロリーです。飲みすぎると肥満のリスクが高くなりますし、お酒は過食を促進させるので体重が増えやすくなってしまいます。暴飲暴食は高血圧、糖尿病などの生活習慣病の敵ですから、アルコールを飲むときは、日本酒なら1合程度までにとどめましょう。また、尿酸の高い患者さんは、常習的なアルコール摂取は避けるようにします。
 また、酒のつまみは、乾き物、ナッツ類、珍味類など塩分が多い食べ物が多いため注意が必要です。唐揚げ、焼き鳥、刺し身などたんぱく質の多い食べ物にも気をつけてください。

腎臓病になると、一生塩分制限が必要ですか?

 腎臓病であることがわかったら、生涯塩分制限と付き合う覚悟をしましょう。
 本来、健康であっても塩分の摂りすぎはいけません。日本では男性11.3g、女性9.6gの塩分を摂っているとされ、目標は18歳以上の男性8g未満、女性7g未満です。高血圧のある人は6g未満で、腎臓病患者さんでも同様です。塩分を摂りすぎれば高血圧などの生活習慣病のリスクが高まります。これを機会に、食習慣を見直しましょう。
 高血圧は慢性腎臓病を悪化させ、腎臓病が高血圧を悪化させるという負のループが明らかになっています。また、塩分を摂りすぎて体内の塩分濃度が高くなると、水分の排出を防ごうとするのでむくみやすくなります。腎臓病の進行抑制だけでなく、高血圧やむくみなどを防ぐためにも、塩分制限が必要であることを理解しましょう。

果物は健康によさそうなのに、腎臓病の人が食べてはいけないのはなぜですか?

 実は、果物にはカリウムが多く含まれています。カリウム制限の必要がない場合は食べても構いませんが、カリウム制限をしている腎臓病患者さんは控えましょう。
 特にバナナ、メロン、キウイフルーツや、いよかん、はっさくなどの柑橘類はカリウムが多いので、できる限り避けたい果物です。また、100%果汁ジュースやドライフルーツなどの果物加工品もカリウムが多いので控えてください。
 缶詰の果物は比較的カリウムが少なめです。ただし、缶詰のシロップにはカリウムが多く溶けているので飲まないようにご注意を。

腎臓病の改善に効果的な食べ物はありますか?

 残念ながら、食べるだけで腎臓病がよくなるものはありません。
 減塩を心がけ、干物、ベーコン、ウインナー、ハムなどの肉加工品、ちくわ、さつま揚げなどの練り物を控えてください。昆布や鰹節などでだしをきかせ、しょうが、わさび、スパイスなどの香辛料、レモンや酢などで酸味をつけると、塩分が少なくでも満足感の高い味付けに仕上がります。
 たんぱく質やカリウムの制限が必要な場合は、医師や栄養士と相談のうえ、市販の腎臓病患者さん用の食品を活用するのもよいでしょう。食事をきちんとコントロールすることが腎臓病の進行を防ぐ近道です。

腎臓病に影響のある飲み物はありますか?

 腎臓は尿の排出をつかさどる臓器です。腎機能が悪くなると、老廃物を排泄しやすくするために、水分の摂取量を多くして尿量を増やすようにしますので、主治医の判断を仰ぎましょう。通常、水分量として1日1~2L程度を勧めています、
 また、注意したいのはたんぱく質、カリウムを多く含む飲料です。たんぱく質が多く含まれる牛乳、ヨーグルト飲料、豆乳、カリウムが多く含まれる青汁、果汁100%ジュース、野菜ジュースなどは腎臓病を悪化させる一因となりますので控えましょう。
 緑茶、紅茶、コーヒーなどは、茶葉やコーヒー豆から入れるとカリウムが多く、ペットボトル入りの緑茶飲料や缶コーヒーは、比較的カリウムが少なめです。

腎臓病になると、なぜむくみやすいのですか?

 重い痛みが生じる場合もあります。
 腎臓に障害が起こると血液を十分にろ過することができず、老廃物や余分な水分、塩分を排せつしにくくなります。この余分な水分などがむくみの原因です。また、たんぱく尿もむくみの原因の1つです。
 むくみは腎臓病の症状として起こることが多いのですが、一般に症状が進行するとみられやすく、全身にむくみが広がると肺水腫を起こすこともあります。体重が急に増加した場合が要注意で、脚のすねを強く押し、へこみが残ることでむくみがわかります。
 ただ、むくみは、心機能低下、肝臓障害、甲状腺など腎臓病以外の病気が原因の場合もあります。気になる症状があるときは必ず医師や栄養士に相談しましょう。

腎臓病になると、なぜかゆみが出やすいのですか?

 腎臓病が進行して腎不全に至ると、かゆみを訴える患者さんが多くなります。しかし、その原因は明らかになっていません。今のところ、汗腺の萎縮による皮膚乾燥、腎機能低下による高リン血症、腎性貧血、末梢神経の障害、食事内容などの影響があるとみられます。さらに最近では、皮膚にあるかゆみ受容体(かゆみを感じる部位)を老廃物が刺激して、脳がかゆみと感じるとも推察されています。
 かゆいとかきむしりたくなりますが、爪で皮膚を傷つけると炎症を起こし、細菌感染のリスクもあります。できるだけ触らず、クリームやオイルなどの保湿剤をこまめに塗る、チクチクしない素材の服を選ぶなどを試してください。軟膏や内服薬のかゆみ止めを使うこともできるので、主治医に相談しましょう。

腎臓病患者が水分を摂りすぎてはいけませんか?

 早期段階の場合、水分を摂りすぎても尿として排出されるため問題ないでしょう。
 しかし、病状が進行すると、尿量を多くして老廃物を排泄するために摂取する水分量を増やします。通常水分量として1日1~2Lくらいを勧めており、この場合はむしろ積極的な水分摂取が推奨されます。
 ただし、飲食物から摂った過剰な水分が体内に蓄積され、さらに塩分を多く摂ると、むくみを招きやすくなります。過剰な水分は肺水腫や心不全をきたし、重症化することがあるため、適量がよいのです。基本的に、腎臓が悪くなっても、前立腺肥大や結石などで尿路が閉塞してしまわない限り、急に尿が出なくなることはありません。ただ、人工透析を始めると透析が腎機能を代替するので次第に尿が出なくなります。この場合は摂った水分がそのまま体に残りますから、厳しい水分制限が必要となります。

トマトはカリウムが多いと聞きましたが、腎臓病の場合は控えたほうがよいのですか?

 血液のカリウム値が高い患者さんは、通常1日1500mgくらいまでのカリウム制限が必要となります。
 トマトはカリウムが多い食べ物で、生食の場合100gあたり210 mgも含まれます(ちなみにバナナ、メロンは約350mg)。カリウムが塩分を排出して血圧を下げる効果、そしてリコピンの抗老化、抗酸化作用が話題になりました。
 カリウム制限が必要な場合は、生食を避け、沸騰したお湯で茹でこぼしてから食べましょう。生のトマトを加工した缶詰やトマトジュースなどもカリウムが多いので注意。トマトケチャップは比較的カリウムが少なめですが、大さじ1杯あたり0.6gの塩分が含まれています。
 最近では、低カリウムトマトや減塩ケチャップも手に入りますので、それらを活用してもよいでしょう。

腎臓病患者用の食事を作る際、なぜ野菜やいもを茹でこぼすのですか?

 野菜やいも類には、腎臓病の人が摂取制限を受けることの多いカリウムやリンなどが多く含まれています。これらの成分は水に溶けやすいので、茹でこぼしたり水にさらしたりすると調理前の1/3~2/3まで減るとされています。
 野菜やいも類は小さく、または切り口面を大きく切り、火が通るまで茹でた後に茹で汁を捨てる「茹でこぼし」をしましょう。電子レンジを使う場合は、加熱後に冷水にさらすとカリウムを減らせます。加熱処理が難しい場合は、食材を切った後1時間程度水にさらしてから調理しましょう。また、カリウムなどが溶けだした水分をしっかり切ることも大切です。
 なお、どうしても新鮮でみずみずしい野菜を食べたい患者さんは、若干高価になりますが栽培法によりカリウム含量を減らした生野菜も販売されています。

お茶はカリウムが多いので、腎臓病患者は避けたほうがよいですか?

 抹茶や玉露などはカリウムが多いので、薄めに入れた番茶を飲むのがおすすめです。
 また、茶葉から入れたお茶よりも、市販のペットボトルなどの飲料のほうがカリウム量を抑えられます。ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶など、茶葉を煎ったり発酵させたりしたお茶は、緑茶よりカリウムが少ないので、食後に1杯楽しむ程度なら問題ないでしょう。
 ノンカフェインのお茶の場合、麦茶は飲んでも差し支えないですが、そば茶、どくだみ茶は控えたほうがよいです。ハーブティーや複数の素材をミックスしたお茶を飲みたいときは、医師や管理栄養士に相談してみてください。

腎臓病の場合、牛乳は飲まないほうがよいのでしょうか。

 牛乳にはリン、カリウムなどが多く含まれています(それぞれ200mg/100g程度)。たんぱく質の含有量も多く(7g/200ml程度)、摂取制限が求められている場合は注意が必要です。
 また、腎臓の機能が低下すると高リン血症を引き起こし、その作用でカルシウムが不足します。乳製品や小魚類は、カルシウムと同時にリンも多く含みますから、カルシウムを補給するためにこれらを摂取すると逆効果になりかねません。
 低脂肪や無脂肪タイプの加工乳も、たんぱく質、リン、カリウムなどの量は市販の牛乳とほとんど違いがありません。なお、牛乳の代わりに市販の低リンミルクを使う方法もあります。栄養価を理解して摂るのはよいのですが、「骨が丈夫になる」「カルシウム補給」などのために習慣化する必要はないでしょう。

腎臓病患者向けの特殊な食品があるのですか?

 腎臓病と診断されると、塩分の摂取制限をはじめ、病状によってたんぱく質、リン、カリウムなどの制限が求められます。腎臓病の進行とともに摂取制限が厳しくなると、食材選びやメニュー作りの負担が大きくなります。
 そこで、腎臓病患者さんがより多くの食べ物を口にでき、食事を楽しめるようにと開発されたのが治療用特殊食品です。ごはんや麺などの穀物に含まれるたんぱく質を除いた食品、低カリウムのトマトなど、さまざまなタイプが登場しています。手軽に調理できるレトルトの食品もあるので、上手に活用してメニューのバリエーションを広げるとよいでしょう。

腎臓病患者にリンがよくないのはなぜですか?

 リンは栄養成分のミネラルの一つです。カルシウムとともに骨を作る物質であり、さらにはエネルギーや核酸、細胞の膜を作る重要な物質です。
 腎臓病になると、腎臓の排せつ機能が低下します。塩分やカリウムと同様に、体内のリンの排出も妨げられるので、血中のリン値を基準範囲内に保たなければなりません。
 進行して「高リン血症」になってしまうと、骨がもろくなったり、血液中に増加したリンがカルシウムと結合して石灰化して血管の内側に沈着し、動脈硬化から脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞、狭心症などの重篤な疾患を招くことになります。また最近では、患者さんの高齢化も相まって、下肢の動脈硬化による血行障害(抹消動脈疾患)から足切断に至る例が増加しています。
 たんぱく質量と比較的相関するため、肉類、大豆や落花生などの豆類、干物、チーズ、ハム、小魚など、さらに添加物に含まれる無機リンは吸収率も高いため、加工食品や清涼飲料水などを控え、摂取量をコントロールしましょう。

腎臓病を患っています。シチューを食べても大丈夫でしょうか?

 たんぱく質やカリウムの摂取制限に気をつけて調理してください。
 シチューに使用しがちな牛乳や豆乳、いも類、肉類などはいずれもたんぱく質やカリウムが多くなりがちです。また、ベーコンやウインナー、あさりなどのリンが多く含まれる食品にも注意が必要です。
 市販のルーを使うと塩分が多くなりますし、生クリームにもたんぱく質が多く含まれています。シチューのとろみはたんぱく質の含まれていないでんぷん由来の治療用特殊食品などを使いましょう。野菜やいも類は、小さめに切ってから茹でこぼすなど調理法を工夫すれば、腎臓病の方でも安心しておいしく食べられます。

腎臓病は完治するのでしょうか?

 腎臓病は「腎臓に何らかの障害、病変がある、もしくは腎機能が60%以下になっている」ことを定義した言葉で、その原因については触れていません。
 IgA腎症といった腎炎などのケースで、最近は免疫抑制療法などにより治癒したり、活動を抑えたりすることは可能になってきました。特にIgA腎症で扁桃腺を摘出し、ステロイドの大量療法を行うと、ほぼ尿所見が消えて治癒状態になることが報告されています。
 ただ、基本的に、一度低下した腎機能が回復することは難しいと考えられています。しかし、何らかの原因で急激に腎機能が低下した場合は、適切な治療を行えば回復する可能性があります。また、慢性腎臓病の場合でも、早期に治療を開始し、適切な食事コントロールや投薬をすれば、腎臓の機能の低下を防いだり、遅らせたりすることが可能です。
 糖尿病からくる腎臓病でも、微量なたんぱく尿が認められる時期に血糖コントロールをしっかりすると、それ以降進行しない、もしくは治癒に至ることがあります。

患者によって、食事療法の内容が違うのはなぜですか?

 腎臓病の食事療法は、腎機能の状態や合併症の有無、体重、体調などを考慮して行います。特に、糖尿病に端を発して発症した腎臓病では血糖のコントロールも必要で、食事内容は他の原因の患者さんと異なることがあります。
 通常、腎臓の働きが低下するにつれ、塩分、たんぱく質、リン、カリウムなどの制限が厳しくなります。また、高血圧、腎性貧血、高カリウム血症などの合併症が現れたときは、病状に合わせた食事を摂る必要もあり、腎臓病患者さんが一律の食事制限をすればよいというものではありません。
 たんぱく質制限により摂取カロリーが減ると、筋肉が分解されて血中の尿素窒素が増加し、腎臓に過度な負担をかけてしまう恐れもあり、脂質や糖質で補うよう指導する場合もあります。また、発達途中の小児の場合は制限内容が異なります。