脂質異常症の方の行事食
脂質異常症(第13章)

脂質異常症の方の行事食のポイントを紹介

脂質異常症 (13章-1) 脂質異常症の方向けのおせち

脂質異常症の方が召し上がるおせちのポイントを紹介しています。

脂質異常症の方向けのおせち料理

 歴史のある伝統行事には、昔から人々が大切にしてきた祈りが込められています。おせち料理にも、その一品一品に新しい年を祝う気持ちや、家族の健康や繁栄、豊作・豊漁などを願う意味があり、知れば知るほど興味深いものです。
 たとえば、卵のたくさんついた「数の子」には子孫繁栄、「田作り」には稲の豊作を祈願するという意味があり、「黒豆」は「まめ(達者・健康)に暮らす」、「昆布巻き」は「喜ぶ」などの言葉に通じています。  「たたきごぼう」は地中に深く根をはることにちなんで、家や家族の堅牢な土台を願う料理。「かまぼこ」は紅白の彩りや、初日の出を模した半月形などの飾り切りにすることで、門出のお祝いを表します。「栗きんとん」は「金団」という字が当てられることもあり、黄金色からも財宝や富を連想させる鮮やかさです。
 お年寄りのように長いヒゲを蓄え、腰を丸めた海老は、長寿を願う気持ちのこもった一品です。出世魚である鰤の照り焼きは「立身出世」、鯛の塩焼きは「目出度い(めでたい)」に通じており、おせち以外でもよく知られた縁起物です。各地の多種多様なおせち料理を揃えると、20~30種類にものぼるといわれています。

   さて、これらの料理のうち、脂質異常症の人が注意するべき食材などはあるでしょうか。最も気を付けたいのは、食品中のコレステロールです。最近は変わり種のおせちセットなどもあり、珍しい食材が加わっていることもありますが、前述のような伝統的なおせち料理であれば、コレステロールの高い卵、乳製品、肉類はさほどたくさんは含まれていないはずです。
 ただ、たまごが必ず使われている「伊達巻き」は控えめにしておきましょう。衣にたまごが使われている揚げ物や、脂質の多い牛肉や鶏肉の皮、レバーやハツなどの内臓肉を使った料理が入っている場合も、コレステロールが高いため、注意が必要です。
 おせちに欠かせないイクラや数の子のほか、タラコ、筋子、ウニなどの魚介類にも、コレステロールが含まれています。ただ、元日にお寿司のタネ程度の量を食べるくらいであれば、さほど心配はないと考えられます。
 海老、イカ、タコなどにもコレステロールが含まれていますが、LDLコレステロールの減少に役立つステロール類と呼ばれる成分や、不飽和脂肪酸なども含まれていますから、たくさんの量を食べるのでなければ、とくに問題はないでしょう。
 食品に含まれる脂肪や、植物油などの油脂類の摂取量を抑えることも、中性脂肪やコレステロールの状態を健康に保つための、食事のポイントのひとつです。洋風のアレンジで、肉類の多いおせち料理をお取り寄せするなどの場合は、量を控えめ目にしたり、肉の脂身ははがすなどの工夫をしてみてください。

 また、コレステロールや脂質以外に気を付けたいのが、糖質です。伊達巻き、栗きんとん、田作り、黒豆など、甘味の強い料理は、食べ過ぎない工夫が必要でしょう。お重から直接とって食べるのではなく、あらかじめ小皿などに少量を取り分けておくとよいかもしれません。
 砂糖を控えめにして、手作りをするのもおすすめです。たとえば、栗きんとんなどは砂糖や栗の甘露煮を思い切って半分以下に減らすと、糖質やカロリーをカットでき、さつまいもの素朴な味わいが楽しめます。りんごのすりおろしなどを少し加えて、味を整えてもよいでしょう。
 野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなどは、コレステロールや脂質、糖質、カロリーが低く、コレステロールを減らす食物繊維や、ビタミン・ミネラル類が豊富に含まれているため、普段はもちろん、お正月も積極的にとりたい食材です。
 おせち料理を食べ始めるときも、まず、なます、酢の物、筑前煮の野菜、こんにゃく、昆布などに箸をつけてから、肉や魚などを使った料理へと進むようにしてみてください。食事の前半に食物繊維をとれば満腹感を早めに得ることができて、食べ過ぎを防ぐことができます。食物繊維には腸内の健康を整えるといった有益な働きがあるほか、コレステロールや中性脂肪値を下げる効果も期待できます。
 なますや酢の物などは、大根と人参という組み合わせのみにこだわらず、きのこ、パプリカ、しょうが、カニカマなどを加えてアレンジしたり、くるみなどのナッツ類や、香辛料、香味野菜などをプラスして、味の異なるレシピのバリエーションを用意しておくと、飽きずにたくさん食べることができます。
 減量やカロリー制限を行っている人も、ビタミンやミネラルが豊富な野菜を毎日しっかりとることは重要ですから、ぜひサラダ代わりに活用してください。野菜は種類を問わず、お正月も1日に350gをとるように心掛けたいものです。

 お正月休みは、ダイエットや生活習慣の改善に取り組むチャンスでもあります。美味しいおせち料理をきっかけに、食習慣についても、見直してみてはいかがでしょうか。そうすれば、お正月明けの仕事や家事も、より明るく元気な足取りでスタートできそうです。

脂質異常症 (13章-2) 脂質異常症の方向けの七草粥

脂質異常症の方が召し上がる七草粥のポイントを紹介しています。

冬場にとりにくい栄養素がたっぷり

 新年を祝う料理などで疲れた胃腸を休め、無病息災を願いながら食べる「七草粥」。グルメブームが続き、存在感が薄れてしまった時代もありましたが、近年、再び健康によい自然食として見直されつつあります。
 七草粥に入れる野菜は、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろの7種類が一般的です。この7種類を、「春の七草」と呼びます。
 七草粥を食べるという風習は江戸時代の日本にもありました。野菜の生産や流通が今ほど進んでいない時代には、冬場に野菜をたくさん食べることは困難だったようです。ですから、お正月過ぎに七草粥を食べることには、不足したビタミン類などの栄養素を補給する目的もあったのかもしれません。
 実際に、せりには、免疫力を高めるβ-カロテンやビタミンCが、すずなには、ビタミン類以外にカリウムや鉄、カルシウム、亜鉛などが含まれています。
 七草にはその他にも健康に役立つさまざまな働きがあります。母子草(ははこぐさ)とも呼ばれるごぎょうは、せきやたんを止める効果があり、ごぎょうとはこべらにはともに、尿の出をよくするために役立つとされています。
 ほとけのざ、すずな、すずしろは胃腸の健康に効く野草。ほとけのざは生薬として、漢方胃腸薬にも配合されます。すずなはかぶの別名、すずしろも大根の別名ですが、ともに消化をすすめて胃腸の働きを整える成分が豊富です。

肥満気味の人は食べすぎに注意

 七草粥はコレステロールや中性脂肪を増やす心配がなく、ごはんの食べ過ぎにさえ注意をすれば、脂質異常症の人にとってはむしろ健康維持や増進のために、プラスになるメニューといえるでしょう。
 野草の青臭さが苦手な人は、七草をてんぷらなどで食べることもあるようですが、できればお粥にして食べたいものです。出汁は昆布などでとることが多いようですが、鶏がらスープや、ホタテ缶のホタテやつゆを加えてアレンジしてもおいしく食べやすくなります。
 滋養に富んだ野草の味わいが心身に染み渡れば、体の内側からも春の訪れを感じられそうですね。

脂質異常症 (13章-3) 脂質異常症の方向けのお花見

脂質異常症の方がお花見の際に召し上がるお食事のポイントを紹介しています。

お花見は江戸時代から人気のレジャー

 桜が咲き始めると、ようやく春も本番。家族や仲間とのお花見を楽しみにしている人も、多いのではないでしょうか。
 桜の花は平安の昔から、日本に咲く多くの花の中でも、とりわけ多くの人に好まれてきたようです。平安時代には宮中で桜の花見が行事となり、鎌倉時代・室町時代に、この風習が武士の間にも広まったといわれています。
 江戸時代には一般庶民の間でも桜見物が人気となりました。浮世絵などにも度々描かれているように、桜の名所も次々と誕生したようです。
 昨今では各地で「桜まつり」と称したイベントや、夜桜を艶やかに演出するライトアップが開催されるなど「お花見」の魅力はますます広がりをみせています。
 グルメな人にとっては、お花見に持っていくお弁当なども気になるところでしょう。せっかくですから、春を感じられる食材を中心にしたお弁当を手作りしてはいかがでしょうか。

お花見弁当は和風でヘルシーに

 コレステロールや中性脂肪の値が気になる人へのおすすめは、桜の花の塩漬けやえんどう豆の混ぜご飯や手まり寿司、たけのこや大根の煮物、菜の花のからし和え、ワカメの酢の物、白みそを添えた蒸し野菜など、旬の食材をたっぷり使った「和風のお花見弁当」です。鯛やサワラなどの魚もおいしい季節ですし、春キャベツやアスパラガスなども旬を迎えますから、ぜひおかずに加えてみてください。
 野菜と魚を中心に和風にまとめれば、フライドポテトなどの揚げ物や、味付けの濃いから揚げやハンバーグなどの肉類が多くなりがちな市販のお弁当に比べて、カロリーや糖質、脂質をぐっと控えめにすることができます。
 鰆や春ガツオもDHAやEPAも豊富に含まれていますから、中性脂肪を低下させるのに役立ちます。
 肥満気味の人や、ダイエット中の人にとっても安心でしょう。盛り付けを工夫すれば、春の野山の風景に負けない、彩り豊かなお弁当の出来上がりです。
 健康のためには、お酒の飲み過ぎ、お菓子の食べ過ぎにご注意を。外でのお花見の際は、上着を一枚多く羽織って、体を冷やさないように気を付けてお出かけください。

脂質異常症 (13章-4) 脂質異常症の方向けの土用の丑

脂質異常症の方が召し上がる土用の丑のお食事のポイントを紹介しています。

現代の土用にうなぎは無用?

 「土用(どよう)」とは、雑節という暦の上で、立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間のことで、丑(うし)の日に当たる日が、「土用の丑」と呼ばれます。「土用の丑」といえば、夏の土用が一般的です。2019年の場合は、7月27日が土用の丑になります。
 さて、土用の丑といえば、何といっても「うなぎ(鰻)」でしょう。夏バテしない体力を養うために、滋養のあるうなぎの蒲焼きなどを食べることがよいとされています。このような風習は、実は平安時代から存在したそうですが、江戸時代に蘭学者の平賀源内によって一般に広められて、うなぎの人気が高まったという逸話があります。
 実際に、うなぎはエネルギーが豊富であり、ビタミンAやビタミンB群が含まれているため、疲労回復には役立つ食品の一つと考えられます。しかし、うなぎの本来の旬は冬であり、栄養不足の可能性が少ない現代においては、さほど特別視されるべき食品とはいえないようです。
 また、近年うなぎの数は激減しており、一度に大量のうなぎを消費するのは、種の保存の面からみても得策ではないと考えられています。

「う」のつく食材を取り入れよう

 あまり知られてはいませんが、「丑の日には『う』のつくものを食べると夏負けしない」という言い伝えもあります。
 たとえば、牛(牛肉)、馬(馬肉)、瓜、梅干し、うどんなどを食べるとよいという風習もあるのです。
 うなぎの蒲焼きや、たれをたっぷりとかけたご飯にうなぎを乗せたうな重は、カロリー、脂質、糖質ともに多く、味付けも濃いため、コレステロールや中性脂肪の値が心配な人や、肥満が気になる人にとっては、決してヘルシーなメニューとはいえません。
 今年の丑の日は、牛しゃぶや馬刺し、きゅうり(瓜)のサラダ、冬瓜の煮物など「う」のつく食品を使うメニューで、献立を立ててはいかがでしょうか。多種多様な食材をとったほうが、栄養のバランスもおのずと整いやすくなります。 
 うなぎが好物で、どうしても食べたいという人は、うな重ではなく「ひつまぶし」や「せいろ蒸し」を選ぶようにすると、カロリーなどはやや控えられます。
 または、うなぎときゅうりの酢の物である「うざく」や、うなぎを出汁巻き卵でくるんだ「う巻き」、たれなどをつけずに焼いた「白焼き」などを献立に加えてみてはいかがでしょう。うなぎの量は少なくても、山椒を振りかけていただくことで、季節の風味を充分に味わうことができます。

脂質異常症 (13章-5) 脂質異常症の方向けの年越しそば

脂質異常症の方が召し上がる年越しそばのポイントを紹介しています。

ねぎを加えると幸運がアップ?

 年の瀬になると、恋しくなってくるのが温かいおそばです。まずはつゆの香りと湯気が立ちのぼる器の中へ、七味をひと振り。一口すすれば体がポカポカと温まり、冬のおそばのおいしさがじんと染み渡ります。
 もちろん、12月31日の大晦日にも、年越しそばが欠かせません。そばの細長い見た目にあやかって「健康で長寿であれ」という縁起をかついで食べるものですが、起源は一体どこにあるのでしょうか。
 年越しそばは、江戸時代に町人の間に少しずつ広まった習慣だといわれています。さらには、ねぎをトッピングとして添えることで、ねぎの語源である「ねぐ(=祈る)」という意味が加えられ、金運や幸運などを願うことができるという伝承などもあるようです。
 誰が始めたことかはわかりませんが、昔の人も年の節目を大切にしており、そばをたぐりつつ健やかな暮らしを願いながら過ごしていたことは、間違いがないようです。

つゆを残して塩分量を減らそう

 実際に、そばは余分なコレステロールを排出する食物繊維や、血管を丈夫にするルチンというビタミンなどが豊富で、健康に役立つ食品です。コレステロールや中性脂肪値が気になる人にも、すすめられるメニューといえるでしょう。
 具材からみると、かけそばや、わかめそば、山菜そば、とろろそば、大根のおろしそばなどは、脂質などが控えめです。きつねそば、たぬきそば、天ぷらそば、かき揚げそばなどは、揚げ物などがプラスされているぶん、カロリー、脂質ともに多くなります。
 また、気をつけたいのがつゆの塩分です。とくに血圧の心配はないという人も、つゆは飲み干さずに、できるだけ残したほうが安心でしょう。飲み干してしまうと、そば1食で10g前後もの塩分をとることになり、一日の適正な塩分量をオーバーしてしまうためです。
 また、そばばかりに偏ったりせずに、献立には野菜や魚なども取り入れて、栄養面のバランスにも配慮しましょう。