脂質異常症のQ&A
脂質異常症(第11章)

脂質異常症の方が気になる疑問点のまとめ

脂質異常症 (11章-1) 脂質異常症のQ&A

脂質異常症の方にとって気になる疑問点とその答えを、
Q&A形式で30個紹介します。

Q. 脂質異常症と診断されたら、厳しい食事制限をしなければいけませんか?

 動脈硬化性疾患の危険因子である脂質異常症。その主な原因は生活習慣の乱れです。
 治療の原則は食事療法、運動療法が基本になり、危険因子が多いほど、より厳しい生活習慣の改善が必要となります。
 コレステロール値を下げるには、肉類、乳製品などの動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが最も重要とされています。加えて、コレステロール含有量の多い鶏卵や魚卵の摂取も抑えましょう。血中の中性脂肪が多ければ、脂質、糖質の多い食事やアルコールの摂取量を減らし、摂取カロリー量を抑える食事療法が必要です。ただし、中性脂肪500mg/dl以上では急性膵炎を起こす可能性があり、脂質の摂取制限とともにかかりつけ医の指示を仰ぐことが必須です。

Q. 脂質異常症は運動しないと治りませんか? どんな運動をすればいいですか?

 運動不足が続くと、HDLコレステロールの低下、中性脂肪の増加につながります。その結果、心筋梗塞など動脈硬化性疾患を招きます。
 有酸素運動を行うと、HDLコレステロールの増加、中性脂肪の減少が確かめられています。脂質異常症の患者さんには、大きな筋肉を律動的に動かす有酸素運動が効果的ですので、ウォーキング、ラジオ体操、サイクリング、水泳がおすすめです。
 「楽である」~「ややきつい」と感じるくらいの、少し汗ばむ程度の有酸素運動を1日30~60分、週180分以上を目標にしてください。階段の昇り降りや徒歩移動を増やすように心がければ、運動の時間を別に確保しなくても効率的に体を動かすことができます。

Q. 脂質異常症の食事療法のコツを教えてください。

 高LDLコレステロール血症の場合は血中のLDLコレステロールを増やす動物性脂肪(飽和脂肪酸)とコレステロール含有量の多い食品の摂取を制限し、血中コレステロールを減らす植物油(多価不飽和脂肪酸)の摂取を増やしましょう。高中性脂肪血症の場合はごはん、パン、麺類などの主食や甘いお菓子の摂取量を減らし、体重減少に努めましょう。
 動脈硬化性疾患予防のために日本動脈硬化学会が推奨している「The Japan Diet」(伝統的な日本食)を基本に考えるとよいでしょう。日本人が1970年代以前から摂取してきた魚類、大豆製品、野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取量は多めに、肉類、乳製品、卵黄の摂取は抑えます。また、食塩を多く含む食品の摂取は控えましょう。

Q. 脂質異常症患者が動脈硬化になりやすいのはなぜですか?

 動脈硬化には、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)、細動脈硬化、中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)があります。起こる動脈や起こり方によって分けられますが、脂質異常症によって引き起こされるのは「粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)」です。
 血中のLDLコレステロールが増えると、血管壁の内部に蓄積し、アテロームという粥状の塊になります(粥状硬化)。このアテロームが大きくなることにより血管の内腔が狭くなり血流が悪くなります。さらにアテロームが破裂して血栓が生じ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるのです。

Q. どうすれば脂質異常症を予防できますか?

 脂質異常症を防ぐには、何よりも生活習慣を整えることが重要です。
 動脈硬化性疾患予防のために、日本動脈硬化学会は「The Japan Diet」(伝統的な日本食)を推奨しています。1970年代以前の日本人の食事に倣い、魚類、大豆製品、野菜、果物、未精製穀類、海藻を積極的に摂り、肉類、乳製品、卵黄、そして食塩を多く含む食品の摂取を抑えるというものです。
また、散歩やウォーキング、水泳など、「楽に続けられる~ちょっときついけど続けられる」くらいの有酸素運動を取り入れることも重要です。そして、飲酒や喫煙、過度なストレスも脂質異常症の要因となります。特に喫煙は、HDLコレステロールを減らし、動脈硬化を進行させる一因にもなりますので、ぜひ禁煙をおすすめします。

Q. 脂質異常症は遺伝しますか?

 脂質異常症の多くは、長年の生活習慣が主原因です。
 ただし、一部の患者さんは、体質が原因で高脂血症となります。「原発性高脂血症」は、体質が要因で発症する脂質異常症の総称です。
 なかでも「家族性高コレステロール血症」は頻度の高い原発性高脂血症で、動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性疾患発症リスクが非常に高いので、かかりつけ医と相談のうえ、薬物療法が必要になります。
 家族や親戚の中に高LDLコレステロール血症で心筋梗塞、狭心症などを発症した人がいる場合は早期に家族の血液検査を行い、必要に応じて治療を受けるようにしましょう。

Q. 脂質異常症患者の献立選びは難しそうです。LDLコレステロール値を抑えるにはどうしたらよいですか?

 動物性脂肪(飽和脂肪酸)を多く含む肉の脂身、動物性の油脂、乳製品などの過剰摂取によりLDLコレステロール値が上昇することが確かめられているので、これらを摂り過ぎない献立がよいでしょう。
 コレステロールを多く含む鶏卵、たらこ・いくらなどの魚卵、レバーなどの内臓を摂り過ぎると、血中LDLコレステロール値が上昇するデータがあるので注意しましょう。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が含まれるオリーブオイル、えごま油、大豆油などの植物性油脂の摂取はLDLコレステロールを低下させることがわかっており、動物性脂肪を植物性脂肪に代替するのもおすすめです。

Q. 脂質異常症の人が食べてはいけないものを教えてください。

 脂質異常症だからといって、絶対に食べてはいけないものはありません。
 ただし、トランス脂肪酸にはLDLコレステロール上昇のほか、さまざまな悪影響が指摘されているので、避けたほうが賢明です。マーガリンやファットスプレッド、ショートニング、そしてそれらが多く含まれるパンやお菓子、揚げ物などのファストフードは極力控えたほうがよいでしょう。
 なお、食事から摂る脂質の量が多い場合、トランス脂肪酸を摂る量も多くなることが報告されています。トランス脂肪酸だけではなく、飽和脂肪酸などを含めた脂質の摂り過ぎ、さらに食塩の摂り過ぎにも十分に注意してください。

Q. 「高LDLコレステロール血症」と診断されましたが、そもそもコレステロールとはなんですか?

 コレステロールは脂質の一種で、成人の体内には通常100~150gのコレステロールが存在するといわれます。ステロイドホルモンや胆汁酸の材料としての役割、細胞膜の構成成分としての役割など、生きていくうえで欠かせない物質です。
 コレステロールのうち、LDLコレステロールは肝臓から血液を介してコレステロールを全身に運びます。しかし、LDLコレステロールが過剰になると、血管でアテロームという塊を生成し、動脈硬化の要因となります。対してHDLコレステロールは、血管壁の余分なコレステロールを肝臓へ運ぶ役割を持っており、動脈硬化を防ぐ働きがあります。

Q. 脂質異常症と診断されました。お酒はどのぐらい飲んでもいいですか?

 アルコール摂取は血中のHDLコレステロール値を上昇させる作用があります。しかし、中性脂肪も上昇させることがわかっているので、脂質異常症患者さんは飲酒量に注意したほうがよいでしょう。
 また、アルコール自体が高カロリーですし、お酒は暴飲暴食を引き起こし、肥満につながりやすくなります。また、中性脂肪が500mg/dl以上の人では、急性膵炎発症の危険があります。飲酒制限、食事および薬物治療が必要なので、かかりつけ医に相談しましょう。
 動脈硬化性疾患の予防のためにも、アルコール摂取は1日あたり25g以下を目安にしましょう(ビール中瓶1本、日本酒1合、ウィスキーシングル2杯、ワイングラス2杯など)。

Q. 脂質異常症の改善によい食べ物、悪い食べ物があれば教えてください。

 脂質異常症患者さんの食事の基本は、野菜と食物繊維がたっぷりのバランスのよいメニューを摂ることです。
 主食は玄米や雑穀米、パンやパスタは全粒粉を使ったものがおすすめです。精製された白いものより、色がついているほうが食物繊維を多く含んでいると覚えましょう。野菜はおおむね低カロリーで食物繊維が豊富です(根菜類は比較的カロリーが高めなので注意)。海藻、きのこ、こんにゃくなども意識して摂るとよいでしょう。
 血中LDLコレステロールの増加に関わる飽和脂肪酸の多い食材、コレステロール量が多い食材には注意してください。ラードやバター、脂肪分の多い肉類には飽和脂肪酸が多く含まれているので、摂り過ぎには十分気を付けましょう。

Q. 高齢の女性は脂質異常症になりやすいと聞きました。なぜですか?

 脂質異常症の患者さんの数は、50歳までは男性の方が多いですが、それ以降は女性の方が多くなります。
 これには閉経が大きく関係していると考えられています。女性ホルモンの一種であるエストロゲンにはLDLコレステロールを減少させ、HDLコレステロールを増加させる働きがあります。閉経後、エストロゲンの分泌が著しく減少するとその働きが弱まり、LDLコレステロールが増加して高LDLコレステロール血症となる女性が増えてしまうのです。
 また、中性脂肪値については、50代までは男性の方が高い傾向がありますが、女性は30代以降上昇し、60代以降は男女の違いがみられなくなります。

Q. 脂質異常症と診断されました。妊娠・出産に影響はありますか?

 高脂血症の患者さんは、妊娠・出産にあたって注意が必要です。これは、治療に使われている一部の薬(スタチン、フィブラート)が妊娠・授乳中に使用できないためです。
 高脂血症と診断された方が妊娠を希望する場合は、妊娠前に必ず医師に相談し、該当する薬を服用しているときは他の種類に替えましょう。自己判断で薬をやめるのはNGです。また、妊娠中はLDLコレステロールや中性脂肪の値が高くなる傾向があります。リスクを理解し、食事療法や運動療法を併用するとともに、定期的にかかりつけ医の診察を受けましょう。

Q. 脂質異常症になったら、卵は食べないほうがよいのでしょうか?

 高LDLコレステロール血症と診断されても、鶏卵は厳禁ではありません。
 ただし、卵は高コレステロール食品なので、食べ過ぎには注意してください。日本動脈硬化学会では、高LDLコレステロール血症の方は、コレステロール摂取を抑えることを勧めています。鶏の卵はカステラ、シュークリームなどの加工品にも多く含まれており、肉類、魚卵類など他の食材に含まれるコレステロール量を合わせるとすぐに摂取過多になりがちです。
 実は、コレステロール摂取量と血中コレステロール値の関係には明確なエビデンスがない状況であることも注釈しておきます。

Q. 高中性脂肪血症で、糖質を減らすよう言われました。脂質異常症の場合、脂質を減らすのではないのですか?

 中性脂肪は、食べ物に含まれる脂肪をもとに小腸で作られるほか、肝臓で脂質と糖質から合成されます。脂質異常症の場合は脂質の摂取を抑えることが基本ですが、高中性脂肪血症の原因は食べ過ぎ、運動不足、糖質の過剰摂取により血中の中性脂肪が増えることもあります。
 血中の中性脂肪が高い人は、普段から糖質を摂り過ぎ、肥満傾向にある人が多いのです。過剰なエネルギーは肥満の要因となり、高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症の進行のスピードを上げてしまいます。
 糖質は主食や甘いものだけでなく、ケチャップやソースなどの調味料にも多く含まれています。糖質やカロリーに目を向けて適量を使いましょう。

Q. 肥満だと脂質異常症になりやすいのはなぜですか?

 カロリーの過剰摂取は肥満を引き起こします。
 肥満状態が続くと、高中性脂肪血症・低HDLコレステロール血症の発症リスクが高くなることがわかっています。これは、カロリーを過剰に摂り過ぎると、体内に脂肪が蓄積されるだけでなく、肝臓で中性脂肪の合成が促され、血中の中性脂肪値が上昇してしまうからです。
 さらにこの状態が続くと、動脈硬化が進行して心筋梗塞などの発症リスクが高まります。糖尿病、高血圧などの疾患も発症しやすくなるのです。肥満は万病のもとなので、適正体重(BMI25以下)をめざして節制を心がけましょう。
※BMI(Body Mass Index)計算式……体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

Q. おやつを食べるとき、脂質異常症の患者が気をつけることはありますか?

 スナック菓子やケーキ類など、脂肪分や糖質が多いものはできるだけ控えたほうが賢明です。また、油脂を加工・精製する工程でできるトランス脂肪酸にも注意が必要です。トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸よりもさらにLDLコレステロール増加に影響があり、中性脂肪の合成を促すインスリン抵抗性を悪化させる報告もあります。マーガリンやショートニングが入ったパン・お菓子は避けるようにしましょう。
 また、おやつとして手を伸ばしがちな果物やジュース・清涼飲料水も肥満の要因となる糖類が多めです。1日3食、いつもと同じ量の食事を摂ったうえに間食をするとカロリー過多になりますから、おやつを食べるときは主食を減らすなどして調整しましょう。

Q. 脂質異常症患者ですが、たばこを吸ってもよいですか?

 喫煙は動脈硬化の主要危険因子であり、禁煙が必須です。
 たばこはHDLコレステロールを減らし、動脈硬化を促すことが明らかになっています。喫煙本数が増えるほど、動脈硬化による冠動脈疾患による死亡や突然死の割合も高くなり、脂質異常症の治療の妨げになります。
 一方で、禁煙すると動脈硬化が改善する効果があります。脂質異常症の治療には生活習慣の改善が不可欠ですが、禁煙も大切な要素の一つです。本数を減らすだけではなく、禁煙にチャレンジしましょう。

Q. 脂質異常症ですが、牛乳を飲んでもよいですか?

 牛乳に含まれるコレステロールを気にする人が多いようですが、それよりも牛乳に含まれている動物性脂肪(飽和脂肪酸)に気をつけるべきです。
 飽和脂肪酸は、血中のLDLコレステロール値を増加させます。牛乳は、1日にコップ1杯程度を目安に飲みましょう。
 また、牛乳を料理などに多く使いたい場合は、低脂肪乳やスキムミルクを使って調理するといった工夫をしてはいかがでしょうか。なお、アイスクリームや動物性の生クリームなど、高脂肪で高カロリーの乳製品は控えたほうがよいでしょう。

Q. 高脂血症と脂質異常症の違いを教えてください。

 脂質異常症は、かつては総じて高脂血症と呼ばれていました。しかし、HDLコレステロールが少なすぎる状態も高脂血症と呼ぶのは適切でないという理由などから、2007年動脈硬化予防ガイドラインを改定し、脂質異常症という名称に変更されました。
 脂質異常症は、高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症といった血中の脂質が基準値の範囲を外れている状態の総称として使われています。高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症に対しては、高脂血症という名称も併せて使用されます。

Q. ダイエットすれば脂質異常症が改善しますか?

 肥満状態の場合は、適切なダイエット(減量)をおすすめします。
 高中性脂肪血症・HDLコレステロール血症の場合、肥満が一因となっていることが多いので、適切に減量すれば改善が期待できます。動脈硬化予防にも効果があります。
 BMI(体重kg÷身長m×身長m)が25以上の場合は、食生活改善や運動によって標準体重を目標に減量しましょう。体重だけでなく、内臓脂肪を減らすことが大切です。また、本人が「楽である」~「ややきつい」と感じる程度の有酸素運動は、中性脂肪を低下させ、HDLコレステロールを増加させる効果が明らかになっています。

Q. 脂質異常症の人によい飲み物、悪い飲み物を教えてください。

 麦茶、緑茶、ウーロン茶などの無糖茶、ミネラルウォーターはいつもどおり飲んでかまいません。コーヒー、紅茶は、牛乳、砂糖の量を減らすことをおすすめします。
 脂質異常症に限らず、生活習慣病の患者さんで注意したいのは、清涼飲料水やジュースなどの糖分が多い飲み物です。清涼飲料水や近年増えているエナジードリンクなどは、角砂糖に換算して10個以上の砂糖が入っていることも珍しくありません。また、アルコールは摂り過ぎると摂取エネルギーや糖質が過剰になるため、飲む量や回数を控えてください。
 カロリーオフ・ゼロカロリーと書かれた清涼飲料水にもわずかにカロリーが含まれています。市販の飲み物は十分に注意して選びましょう。

Q. 脂質異常症と飽和脂肪酸の関係を教えてください。

 牛脂などの動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸(例:ステアリン酸、パルチミン酸)の摂取と、血中のLDLコレステロール値の上昇に強い関連があることが、日本も参加して行われた国際研究で確認されています。さらに、この研究で血中LDLコレステロール値が高いと心筋梗塞などの動脈硬化疾患の発症頻度が高いことが確認されています。
 ちなみに、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」では、飽和脂肪酸の摂取量を減らすと、冠動脈疾患罹患率、動脈硬化度、LDL コレステロール値を低下させるという研究をもとに、飽和脂肪酸摂取量に摂取上限の目標値を定めています。

Q. 脂質異常症患者が塩分を摂り過ぎるとどうなりますか?

 塩分を摂り過ぎると高血圧症を併発しやすくなります。
 脂質異常症患者さんが高血圧症を合併すると、動脈硬化がさらに加速し、心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞などの脳疾患、腎不全などの腎疾患が起こりやすくなってしまうのです。また、食塩の過剰摂取は胃がんの原因になることも確かめられています。塩気の多い食事はごはんが進み、食べ過ぎてしまってカロリー・糖質の過剰摂取にもつながります。また、外食は塩分過多なことが多いので、食事の塩分量を日頃から意識し、濃い味に慣れてしまわないようにすることも大切です。

Q. 脂質異常症と年齢は関係ありますか?

 アメリカ人での調査によると、臍帯血の総コレステロールは64mg/dlと低位を示します。15歳を過ぎると、中性脂肪とLDLコレステロールは男女ともに上昇します。つまり、年齢を重ねるにつれ、高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症などの脂質異常症を発症しやすくなります。
 女性の場合は閉経後、エストロゲンというホルモンが減少する影響で、血中のLDLコレステロールが上昇し、脂質異常症を発症することがあります。ただし、食事、運動、節酒、禁煙などにより、年齢を重ねても脂質異常症の進行を抑えることは十分可能です。

Q. 脂質異常症と診断されたらもう治らないのですか?

 脂質異常症の主な原因は生活習慣の乱れですので、生活習慣の改善により大部分の脂質異常症の改善は可能です。すでに治療中の場合はかかりつけ医と相談して一時休薬し、薬の効果をチェックすることも可能です。ただし、すでに原発性高脂血症の場合や動脈硬化性疾患を合併している場合は、脂質異常の治療は長期に及びます。
 なお、食事療法と運動療法は一生付き合うことになると考えた方がよいでしょう。適切な食生活と適度な運動習慣を続け、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪の値を安定した状態に保ちましょう。また、生活習慣を整えることは、脂質異常症以外の生活習慣病全般の予防策としても心がけていかねばなりません。

Q. 脂質異常症の患者が外食するとき、どんなことに気をつけるとよいですか?

 外食をするときは、家庭で摂取しているカロリーを頭に入れてメニューを選びましょう。
 フライ、天ぷらなど油を多く使ったメニューは減らし、洋食より和食、肉よりも魚料理を増やすとよいでしょう。糖質の多い料理の場合は、ごはんや麺を半分残しておひたしやサラダなどの野菜料理を1品増やし、不足しがちな食物繊維やビタミンを補ってください。
 やむをえず外食をして栄養が偏ったと感じたら、1日のなか、あるいは数日の食事も含めて食物繊維などを補い、調整するようにしましょう。

Q. 脂質異常症はストレスと関係があると聞きました。本当ですか?

 ストレスは脂質異常症を悪化させる一因とされています。
 私たちはストレスを受けると、体内でコルチゾール(副腎皮質ホルモンの一つ)というホルモンを作って自分の体を守ろうとします。このコルチゾールの原料となるのがコレステロールです。
 そのため、過度なストレスがかかると、副腎皮質ホルモンの材料であるLDLコレステロールが上昇する傾向がみられます。さらに、ストレス解消のためのドカ食い、大量の飲酒、喫煙は、脂質異常症を悪化させる最悪のパターンです。脂質異常症の患者さんは特に、ストレスをため過ぎないことはもちろんのこと、飲食以外でストレスを解消する方法を持つことが大切です。

Q. 脂質異常症を悪化させるというトランス脂肪酸とはなんですか?

 トランス脂肪酸は、植物油を原料に、シス型不飽和脂肪酸をトランス型不飽和脂肪酸に人工的に変えたものです。マーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどの加工された油脂や、それらが含まれるお菓子類、油脂で調理された揚げ物に含まれる脂肪酸です。
 トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸よりもさらに血液中のLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らすことが確かめられています。また、トランス脂肪酸の摂取により動脈硬化性疾患のリスクを増加させることが示されています。

Q. 脂質異常症にオリーブオイルがよいというのは本当ですか?

 オリーブオイルには、LDLコレステロールを下げる働きがあるといわれています。また、飽和脂肪酸の多いバターなどの動物性脂肪の代わりにオリーブオイルなどの植物油を使用することで、高LDLコレステロール血症の改善に一定の効果が得られるでしょう。
 オリーブオイルなどに含まれる一価不飽和脂肪酸(例:オレイン酸)は、地中海沿岸の人々血清脂質値が低いこと、動脈硬化疾患の発症頻度が低いことへの関連が示されています。さらに、オリーブオイルに含まれるポリフェノールには抗酸化作用などの体によい効果、抗疲労効果が認められていますので、適度に取り入れてみてもよいでしょう。
 ただし、これらはあくまで油で、高カロリーです。たくさん摂ればよいというものではありませんので、過剰摂取に注意しましょう。