糖尿病の方の行事食
糖尿病(第13章)

糖尿病の方の行事食のポイントを紹介

糖尿病 (13章-1) 糖尿病の方向けのおせち

糖尿病の方が召し上がるおせちのポイントを紹介しています。

糖尿病の方向けのおせち料理

 新年を祝う食材を、黒塗りの重箱に華やかに詰め合わせたおせち料理。おめでたい席にふさわしく「祝い肴」や「口取り」と呼ばれる縁起物たちがずらりと揃います。祝い肴は祝祭の酒の肴、口取りは前菜にあたる料理のことです。
 たとえば「まめ(=達者・健康)に暮らす」との願いが込められているのが「黒豆」。巻物の形に似た「伊達巻き」は、文化の発展や学問の成就を願う料理です。稲の肥料に用いられたイワシを甘辛く味付けた「田作り」は、豊作・豊漁を連想させる一品です。“金団(きんとん)”という漢字が当てられることもあり、見た目も黄金色をした「栗きんとん」は、「財を成す」ことに結びついているといわれています。込められた意味を知れば知るほど、おせち料理が幸福や富を運ぶ宝船のように見えてくるのです。

 縁起のよさもさることながら、大晦日に用意しておくことで、三が日をゆっくり過ごすための伝統であることも、皆さんはご存じのことでしょう。保存性を高めるために、おせち料理にはしょうゆ、塩、砂糖などが多めに使われています。さらに、最近のおせち料理には、数の子や有頭海老のほかにも、イクラやローストビーフなどを使った、カロリーの高いメニューなどがプラスされていることも少なくありません。血糖値やヘモグロビンA1cが高めの人にとっては、糖質やカロリーが気になるところではないでしょうか。
 確かに、せっかくのおせち料理も、よく考えずにたっぷり食べてしまうと、体調や食事療法のルールなどをくずしてしまいかねません。賢い食べ方や作り方を押さえて、一年のスタートを明るく迎えましょう。
 最近では、糖質やカロリーに配慮した、ヘルシーなおせち料理のセットを、ネットからの通信販売などで気軽に購入することができます。お正月に間に合うように、お取り寄せしておくのも一つの方法です。
 百貨店などで売られている一般的なおせち料理を用意するのであれば、栗きんとん、黒豆、だて巻きなど、糖分を多く含む料理は、控えめにしておきましょう。おせちに外せない「くわい」も、栗きんとんや黒豆に次いで、糖分は多めの食材です。
 サケの昆布巻き、サワラ焼き、松風焼きなど、魚介類やひき肉がベースで、味付けがしっかりしている料理も、煮しめなどに比べてカロリーなどが高くなります。肥満気味の人やダイエット中の人はとくに、お正月も一日の摂取エネルギー量を守り、おせち料理はもちろん、お雑煮に入れる「もち」なども量を決めておくようにしましょう。

 おせち料理を手作りするご家庭なら、調理や素材に少し工夫をすることで、糖質やカロリーを抑えることができます。
 まず、気を付けたいのが、調味料の使い方です。
 ・だしをしっかりひいて、全体的に調味料を控えめに、薄味に仕上げる。
 ・砂糖、グラニュー糖、はちみつなどの代わりに、エリスリトールを主成分とした甘味を使う(「ラカントS」「パルスイート®」など)。
 ・料理酒には糖分の多い日本酒は使わず、糖分が少なめの白ワインで代用する。
 ・糖分の多いみりん、白味噌、ソース、ケチャップ、市販のタレなどは避ける。

   また、おせち料理によく使われる食材のうち、糖質が高めのものは、ほかの食材で代用したり、使う分量を少なめにしておくと安心でしょう。
 ・糖質の高いもちは使わず、高たんぱくで糖質やカロリーの低い焼き麩で代用する。
 ・黒豆を炊く際には、同じ大きさに切ったこんにゃくやまいたけを加えて、かさを増す。
 ・栗きんとんには、クリームチーズや水切りした豆腐を加える。栗の甘露煮は少な目にしておき、甘露煮のシロップなども加えない。
 ・煮しめ(里芋、しいたけ、れんこん、ごぼう、人参、こんにゃく)は、糖質が高めの里芋、れんこん、人参の量を減らして、こんにゃくやしいたけを増やす。
 ・海老や貝類は甘辛い味付けにはせず、酒蒸しにして、ポン酢などでいただく。

 おせち料理も工夫次第で、ヘルシーなアレンジが可能です。
 ただし、調味料などをカットした分、保存には少し気を使う必要があります。大晦日にお重に詰めてしまうのではなく、それぞれの料理を密閉容器に入れて冷蔵庫で保管して、食べる前に取り出すようにすると安心です。
 また、お重や大皿から各自が取り分ける形だと、どうしても好物に偏ったり、食べ過ぎたりすることがありますから、とっておきの絵皿や塗りのお盆に、一人ひとりの分を盛り付けるのも、一つの方法です。無理にがまんせず、食べる量を自然にコントロールしやすくなります。
 「テーブルにお重がないと、なんだか物足りない」という場合は、煮しめを詰めた三の重だけ、食卓の中央に据えてはいかがでしょう。野菜を飾り切りにしたり、柳の枝を削った「祝箸」を用意したり、南天の葉を添えたり、お皿の下に懐紙や千代紙を敷いたりしても、お正月らしさを演出できそうです。

糖尿病 (13章-2) 糖尿病の方向けの節分と恵方巻き

節分と恵方巻きについて紹介しています。
恵方巻きの食べ方の注意点をお伝えします。

中国から伝えられた新年の儀式

 2月3日は「節分」。暦の上で「春の始まり」とされる「立春(りっしゅん)」の前日にあたり、1年のうちの大きな節目として数えられる日です。
「節分」の行事といえば、何といっても「豆まき」でしょう。豆まきのルーツは中国で古くから行われていた、邪気や災難を追い払い、新しい年を迎える儀式にあるといわれています。
 使われる豆は炒り大豆が一般的ですが、落花生(ピーナッツ)を殻付きのまま撒いて食べるところなども見受けられます。近年では、節分の目新しい行事食である「恵方巻き」を楽しむ家庭なども増えてきました。
 その年の恵方(縁起がよいとされる方角)を向いて、巻きずしを切らずにそのままかぶりつくのが「恵方巻き」のルールです。「食べている間は話さない」ともされる理由は「幸運を逃がしてしまわないため」といわれています。
「恵方巻き」の発祥の由来などは諸説ありますし、伝統食と呼べるほど定着はしていないという評価もありますが、巻きずしはいつの時代も、多くの人に好まれやすいメニューです。季節の食の楽しみの一つとして、食卓に取り入れるのもよいのではないでしょうか。

太巻きずしはごはんの量を控えめに

 炒り大豆は良質な植物性のたんぱく質が豊富ですから、糖尿病の人にもおすすめの食品の一つといえるでしょう。
巻きずしを食べる際に注意したいポイントは、ごはんの分量です。まず、普段使っているお茶碗に酢飯をよそってみて、分量を確認しながら、巻くようにしてみてください。ごはんの盛り過ぎによるカロリーや糖質のとり過ぎを防ぐことができます。
 中身にはうなぎ、たまご、かんぴょう、きゅうり、桜でんぶ、しいたけなどがよく用いられるようですが、好みに合わせてアレンジしても楽しいでしょう。 また、太巻きのみでは一食として物足りない場合は、付け合せとしてイワシの塩焼きのほか、野菜の煮物やサラダ、汁物などをプラスすると、栄養バランスを整えることができます。

糖尿病 (13章-3) 糖尿病の方向けの端午の節句

端午の節句について紹介しています。
端午の節句の時期の食べ方の注意点をお伝えします。

男児のすこやかな成長を祝う行事

 五月五日は「端午の節句」。「こどもの日」とも呼ばれており、一般的に男の子のいる家では、五月人形や鯉のぼりを飾ったり、お風呂に菖蒲(しょうぶ)の葉を浮かべた菖蒲湯に入ったりしてお祝いをします。
 端午の節句の行事の起源は中国にあるといわれていますが、そもそもは菖蒲や蓬(よもぎ)を門につるしたり、菖蒲のお酒などを飲んだりして、厄を払う行事だったようです。日本に伝えられた後、「しょうぶ」という言葉の音が「勝負」や「尚武(武勇を尊ぶこと)」に通じることから、男児のたくましい成長や出世を願うお祭りとして定着していきました。
 端午の節句の代表的な食べ物といえば、ちまきや柏餅でしょう。ちまきは、上新粉やくず粉などを練って笹にくるんで蒸したもの。柏餅も、上新粉やもち粉で作った餅に白みそあんやこしあんをはさみ、カシワの葉っぱでくるんだ和菓子です。
 どちらも、糖質が多いため、残念ながら、血糖値が心配な方にはあまり向いていません。笹や柏のさわやかな香りのみを楽しみ、食べ過ぎないように注意をしましょう。

カツオやブリの栄養素で疲労回復

 縁起をかついで、端午の節句に「勝つ」という音を含んだカツオを食べたり、出世魚のブリを食べたりする地域もあるようです。
 これらの魚は、糖質の量が少なく、食べたときに血糖値を上昇させてしまう心配などがありません。鉄分などのミネラルや各種ビタミンなどのほか、脳の健康や血行の促進に役立つDHAやEPAも豊富に含まれていますから、端午の節句のメニューの一つに取り入れてみてはいかがでしょうか。
 おすすめのレシピは、イタリア風のカルパッチョです。オリーブオイルとバルサミコ酢をふりかけて、にんにくのスライスと、たっぷりの玉ねぎスライスと合わせて食べれば栄養のバランスがよくなり、さらにヘルシーです。
 たっぷりのアミノ酸とビタミンをとり、菖蒲湯で体をしっかりと温めましょう。疲労回復がすすみ、体の底から活力が湧いてくるはずです。

糖尿病 (13章-4) 糖尿病の方向けの土用の丑

土用の丑について紹介しています。
土用の丑の時期の食べ方の注意点をお伝えします。

うな重はカロリーも糖質も高い

 「土用(どよう)の丑(うし)」とは、雑節という暦の上で、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間のうち、丑の日に当たる日のことです。四季それぞれに「土用の丑」があるのですが、現在は「土用の丑」といえば、夏のものを指すことがほとんどです。
 さて、土用の丑の日の行事食といえば「うなぎ(鰻)」でしょう。古くから、夏の暑さに耐えうる体力を養うために、うなぎを食べて滋養をつけるべし、といったことがすすめられてきたようです。
 確かに、うなぎにはたんぱく質や脂質、ビタミンA、ビタミンB群などが豊富に含まれています。歴史的に見ると、ご馳走を食べる機会の少ない昔の人にとっては、栄養補給に適した食材だったのでしょう。
 しかし、栄養状態のよい現代人にとってはどうでしょうか。銀シャリにうなぎの蒲焼きを乗せた「うな重」などは、カロリーや脂質、糖質がともに多く、たっぷり食べると、血糖値は急上昇してしまいます。糖尿病の人にとっては、むしろ注意が必要な食品だといえそうです。
 血糖値が心配だけれども、うなぎが好物で、土用には欠かせないという人は、うな重や蒲焼きは避けて、代わりに、うなぎときゅうりの酢の物である「うざく」や、うなぎを出汁巻き卵でくるんだ「う巻き」、たれなどをつけずにうなぎを焼いた「白焼き」を、献立に取り入れてはいかがでしょうか。少量のうなぎでも風味をしっかりと味わうことができて、食事の満足感が高まるはずです。
また、食べる量などにもよりますが、うな重よりも「せいろ蒸し」や「ひつまぶし」を選んだほうが、カロリーは少し控えめにできます。

「うのつく食べ物」と「丑湯」の風習

 うなぎだけではなく「土用の丑には『う』のつく食べ物を食べると夏負けしない」とも伝えられてきました。
 たとえば、牛(牛肉)、馬(馬肉)、瓜、梅干しといった食品で、言葉遊びによって縁起を担ぐ意味があるようです。
 こちらにあやかって、今年の丑の日には牛焼肉や馬刺し、きゅうりのサラダ、冬瓜の煮物など「う」のつく食材のメニューを献立に取り入れるのもよいかもしれません。なるべく多くの種類の食材を使えば、栄養のバランスはおのずとよくなります。
 江戸時代などには、夏バテ防止策として、「丑湯」という土用の丑に薬草を入れたお風呂に入ったり、お灸を据えたりもしていたそうです。入浴剤や簡易灸を使えば、真似ができそうですね。
 さまざまな風習を取り入れて、暑い夏も元気に過ごしましょう。

糖尿病 (13章-5) 糖尿病の方向けのクリスマス

クリスマスについて紹介しています。
クリスマスの時期の食べ方の注意点をお伝えします。

クリスマスメニューの賢い選び方は?

 12月25日はクリスマス。イエス・キリストの誕生を祝うお祭りです。起源をさかのぼると、キリスト教の儀式であるミサ(祭礼)と、北ヨーロッパで行われてきた冬至のお祭りが融合して、クリスマスをお祝いする行事になったといわれています。
 日本では、クリスマスというと、「プレゼントを贈り合う楽しいイベント」という意味合いのほうが強いかもしれません。最近では、12月に入ると街中にイルミネーションやツリーなどが登場して、クリスマスムードが一気に高まりますね。
 ごちそうがいっぱいのイベントやパーティー、ディナーなどに出かけられる機会も増えるときでしょう。糖尿病の人や、血糖値が心配な人は、メニューの選び方・食べ方などに気をつけて、健康状態や体調を上手にキープしたいものです。

チキンよりヘルシーなのはターキー

 クリスマスを祝う料理といえば、チキンやターキー(七面鳥)が定番です。アメリカなどでは昔から、収穫のお祝いなどの際にも、七面鳥の丸焼きなどが食べられていたそうです。
 チキンとターキーのむね肉の栄養価を比べると、ターキーのほうがチキンよりもカロリーが4分の3とやや少ないという特徴があります。コレステロール、ナトリウムなどもターキーのほうがやや低く、たんぱく質や鉄分の量はやや多めです。
 たとえばフライドチキンとターキーのオーブン焼きがブッフェに並んでいる場合には、ターキーのオーブン焼きのほうがヘルシーな選択だといえそうです。調理法から見ても、揚げ物よりもオーブン焼きのほうが、余分な脂肪を落とせます。
 ただ、ホワイトソースやクリーム、ベリーのソースなどがかかっている場合カロリーや糖質が心配です。食べる量は、やや控えめにしておきましょう。
 チキンやターキーと並んで人気のローストビーフなども、フライドチキンやステーキに比べると、脂質が控えめのメニューです。薄切りでたくさん食べられるように感じられるため、食後の満足感が高いところもポイントでしょう。
 付け合わせには、野菜を多めに取り入れて、全体の栄養バランスにも気をつけながら、クリスマスの献立をおいしく楽しみましょう。