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糖尿病(第10章)

糖尿病患者が知っておきたい災害時の準備法

糖尿病 (10章-1) 糖尿病の情報を詳しく知るために

糖尿病は、風邪などの一過性の病気と異なり、
一生付き合っていかなければならない病気です。
病気について知りたいときは、かかりつけ医や看護師などに聞けば教えてくれるものの、
限られた診察時間内にいろいろと聞くのをためらうケースもあるでしょう。
そんなときは、Webサイトの情報を参照し、病気への理解を深めることが大切です。

糖尿病の基本的な情報をチェック

 医療機関で診察してもらったところ、突然「糖尿病です」といわれた人もいるでしょう。糖尿病に関する知識がまったくない人は、糖尿病について何から学ぶのが好ましいでしょうか。まずは、糖尿病の基本を理解するとともに、さまざまな治療法などを学ぶことから始めることが大切です。

 一般社団法人 日本糖尿病学会
 http://www.jds.or.jp/
 糖尿病に関する最新の情報から、学会の開催情報、学会誌や刊行物などを案内するサイトです。主に医師向けの情報となりますが、一般向けに、糖尿病専門医に関する情報を提供したり、糖尿病の専門医を都道府県別に検索したりすることができます。学会が作成する「糖尿病診療ガイドライン」をWebサイト上で参照することもできます。

 公益社団法人 日本糖尿協会
 https://www.nittokyo.or.jp/
 糖尿病に関する正しい知識を提供することを目的としたサイトです。医療従事者向けのコンテンツが含まれますが、患者向けのコンテンツも豊富にそろっています。協会の会員として入会することができ、入会すると、勉強会や患者同士が集まる親睦会などに参加できるようになります。糖尿病の専門誌を無料で購読できる特典もあります。そのほか、糖尿病に関するイベントや医療施設などをWebサイト上で調べることもできます。

  国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター
 http://dmic.ncgm.go.jp/
 一般向けに糖尿病を分かりやすく解説したサイトです。糖尿病の基本から、合併症、診断と検査、治療、薬、関連する病気、1型糖尿病などのテーマ別にまとめています。糖尿病についての知識がないという人におすすめです。

 糖尿病は一生付き合う病気です。かかりつけ医と連携し、病気と上手に付き合っていく方法を模索していくことが欠かせません。しかし、もし地方在住で、近隣に糖尿病を専門とする医師がいない場合、普段からお世話になっているかかりつけ医に相談し、専門性の高い医療機関を紹介してもらうことができます。症状が安定しているときは、近隣のかかりつけ医に診てもらい、症状が悪化したり合併症を引き起こしたりしたときには医師やスタッフ、医療設備が充実した病院に診てもらうといったことが可能です。こうした「地域医療連携」は積極的に取り組まれる医療施策の1つで、地方に住む患者でも、大病院と同じ医療を受けられるような取り組みが進められています。

医療機関が連携して患者をサポートする体制が確立

 地方の小規模な病院や診療所は、通いやすいことから普段の診療に利用したい。しかし、症状が悪化した場合などは、設備や医療スタッフが充実する大病院で診てもらえるようにしておくのが望ましい。

 糖尿病患者や家族向けのイベントや講座は全国の地域で数多く実施しています。こうした場では、同じ病気に苦しむ人と出会え、患者しか分からない苦しみを共感することができます。周囲の家族などに漏らせなかった思いを吐露することで、気持ちが楽になり、糖尿病を前向きに治療していこうとするモチベーションにもつながります。これまで、こうしたイベントに参加していないなら、ぜひ一度、どんな取り組みが行われているのかを体感するのも一案です。

糖尿病 (10章-2) 糖尿病患者のための災害時の準備

日本では近年、大規模な地震や台風が人々の生活に甚大な被害をもたらしています。
被災地域では、避難所生活を強いられる糖尿病患者も少なくないでしょう。
こうした災害に対し、糖尿病患者はどんな備えをしておくべきでしょうか。

災害時用の備品を常備

 糖尿病は食事や排せつ、睡眠、休養などの日常生活の行動が症状に直接影響する病気です。しかし、災害に見舞われ、避難所などで生活することになると、これまでと同じ生活を送るのは極めて難しくなります。避難時に必要となる最低限の生活用具を揃えておき、災害発生時にはすぐに持ち出せるようにしておくことが大切です。災害直後は、十分な支援が行き届かない可能性が高くなります。そのため、「3日間は自分自身で身を守る」という考えのもと、必要な備品を用意しておくのが望ましいでしょう。
 非常用として常備するものには、水、食料、着替え、携帯用ラジオ、懐中電灯などがあります。なお、水は1人あたり1日3リットルを備蓄しておくのが目安とされています。水や食料は賞味期限があるため、定期的に入れ替えるなどして、いざというときに利用できるようにしておきましょう。
糖尿病患者の場合、これらに加えて普段から服用している経口薬や、自分でインスリンを注射するためのキットを用意します。これらは水や食料などの一般的な備品と違い、救助物資が届くようになってもすぐに調達できない可能性があります。そのため、1週間分程度の薬や注射キットを用意しておくとよいでしょう。
 そのほか、低血糖を防ぐためのブドウ糖の中には、水がなくても摂取できるタイプの商品が市販されています。タブレットタイプやゼリータイプのものを用意し、災害時でも低血糖を防止できるようにしておきましょう。

非常用キットのチェックリスト

出典:日本糖尿病学会「糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル」

 また糖尿病治療に使用する備品はポーチなどで携行し、すぐ取り出せるようにしておくとよいでしょう。災害時は、医療機関への受診が困難だったり、経口薬などが不足したりする可能性が高くなります。体調に異変がなく薬を十分持っていたとしても、できるだけ早めに薬のストックを調達しておくのがおすすめです。なお、自身の治療法などを示したノートやお薬手帳、保険証の写しなどを携行していると、避難後でもスムーズに薬を処方してもらうことができます。

避難所生活が長期化したら

 災害後、避難所での生活が長期化する恐れがあります。そんなとき、糖尿病患者はどんな点に気をつければよいのでしょうか。
 まずは生活環境が悪化することから、感染症などの予防に努めることが大切です。粉塵が舞う環境では十分な衛生環境を確保するのが難しくなります。また、狭いスペースであまり動かなくなることからエコノミー症候群を発症するリスクも高まります。高齢者の場合、口腔ケアをおろそかにしないことも大切です。
 糖尿病患者の場合、水分を十分取るようにします。物資が限られる避難所では、飲料水を十分確保できないケースがあります。また、トイレを我慢しようと水分の摂取を控える人も少なくありません。しかし、水分不足は高血糖を招きやすくするほか、血管が詰まるリスクも高まるので注意が必要です。
 食事や運動などの生活習慣をできるだけ維持することにも注意を払います。これまで実施してきた食習慣や運動習慣を崩すことなく継続できるようにします。食料が救援物資からの配給となる場合、おにぎりやパンなどの炭水化物中心の食事になりがちです。そんな中でも食事を自己管理し、血糖値が高くならないように注意することが大切です。
 なお、厚生労働省は「被災地で健康を守るために」という情報をWebサイトに公開しています。生活する上での注意点や病気の予防法、慢性疾患のある人向けの情報などを掲載しているので、事前に参照しておくとよいでしょう。